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2017年6月 7日 (水)

うまい! 授業のつくりかた

「落語家直伝うまい! 授業のつくりかた: 身振り手振り、間のとりかた、枕とオチ…落語は授業に使えるネタの宝庫」立川談慶:著/玉置崇:監修(誠文堂新光社)

 本書は、ちょっと変わった教育書です。
 お書きになったのは、立川談慶さんという落語家さんです。監修をしている玉置先生は、落語に造詣の深い元校長先生。この二人がタッグを組んで、学校の先生(おもに小学校の先生)が授業や学級経営で、子供たちとコミュニケーションするためのヒントを与えてくれています。

 その魅力をお伝えするために、まずは目次をご紹介しましょう。

  • 序章 なぜ落語が授業に役立つのか!?
  • 第1章 授業にのぞむ心がまえ編
  • 第2章 授業テクニック編
  • 第3章 学校生活をスムーズにするコミュニケーション編
  • 第4章 日常生活でコミュニケーション力アップ編

この他に「落語家の徒弟制度」「落語家おすすめ授業レク」「本書に登場する古典落語あらすじ」といったコラムも充実しています。

 それぞれの章は、「落語も授業も仕込みが肝心」、「授業の前にまくらを話す」、「会話は聞くが9割」といった内容で、おおむね2見開き(4ページ)で構成され、落語家さんならではの視点を談慶さんが語り、玉置先生が学校教育としての意義を押さえるという形になっています。これはかなり役に立つことでしょう。

 けれども、本書の白眉はそこではありません。

 本書が本当にすごいのは、談慶さんがここで語っていることはすべて「師匠、立川談志に教わったこと」として書かれていることです。
 談志さんのことを少しでも知っている人ならご存じの通り、弟子に何かを教えるというタイプの人ではありません。談春さんのエッセイ などを読んでも明らかです。今風にいえば、パワハラの権化と言っても言いすぎではないような気もします(笑)。
 にもかかわらず、その教えない師匠から、弟子である談慶さんは「教わった」と書いています。実はこの部分にこそ、教育の本質があるのではないでしょうか。

 学校ではしばしば「教えても子供たちが学ばない」という嘆きが聞かれます。しかし談慶さんは教わってもいないのに学んでいるのです。教育のメタファとしてよく言われる「水辺に馬を連れていくことはできるが、水を飲むのは馬自身である」という言葉があります。要するに、教育を突きつめれば、学ぶ側の問題なのです。
 教えない師匠なのに、なぜ談慶さんは学んだのでしょうか。それはきっと師匠を尊敬していたからでしょう。本書の記述のあちこちからそれはうかがえます。つまり弟子を学びに向かわせているのは、師匠への憧れや尊敬なのです。

 では、そうした憧れや尊敬はどうしたら得られるのでしょうか。おそらくその答えは一つではありません。もしかすると答えはないかもしれません。それでも本書を読み進めるうちに、「なんとなくこうではないか」という視点が獲得できると思います。何より、師匠から真剣に学び取った方の文章なのですから。

 そうした意味で本書は、他の本では決して学ぶことのできない学びのある「教育書」と言えそうです。

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