子どもが夢中で手を挙げる算数の授業
「誰でもトップレベルの授業ができるDVD+BOOK 子どもが夢中で手を挙げる算数の授業 小学6年生(2)」横山験也:監修(さくら社)
小学校では、来年から教科書が変わり、正式に新しい学習指導要領での学習がスタートします。おそらくほとんどの学校で、そのための準備が進められていることでしょう。
この中でも内容が3割増えると言われる、算数と理科については、対応がなかなか難しいことでしょう。これに対応したのが本書。というより、このソフト。本書は商品としては「書籍」ですが、内容のほとんどはソフト、しかも、子どもたちではなく先生が授業で使うソフトなのです。
本書を開くと、左の写真のように表紙の裏側(表2)には、DVDが1枚埋め込まれています。これをパソコンにセットすると、自動的にソフトが起動するのでインストールなど面倒な作業は不要です。操作も、マウスによるクリックとドラッグだけ。つまり、パソコンが苦手な人でもすぐに使える配慮がされています。
そして肝心の中身にも、随所に工夫が見られます。たとえば、左は「速さ」の導入に使われる教材です。設定された速度に応じて、中央にパトカーの車内から見た道路の様子が動画で再生されます。
速さの初期値は「5時間で250km」。時間も距離も、ドラッグして自由に変更できます。「5時間で250kmと6時間で300km、どちらが速いかな」といった問いが発生した場合、このソフトを使えば、まずイメージで掴む授業が可能になります。「距離を時間で割って速度を出して…」のように、計算の仕方を教えるのでは距離を時間で割る意味がわからなくなってしまう可能性があるのに対して、これなら式で得られた値の結果が現実に近い形で実感できるので、より定着するのではないでしょうか。
とはいえ、私が感心したのは、こうした算数教育の理屈部分だけではありません。それは、このソフトの演出部分です。
まずはキャラクター。画面上部に掲げられた「道のりと時間を決めて、速さを見てみましょう!」という問いを見て下さい。発言しているのは、清少納言です。違和感を覚える方もいるでしょうが、私には小学生の気持ちを捉えたうまい設定だと思いました。
6年生では社会科で歴史を学習しますから、歴史上の人物の話題は時事ネタです。それが算数で登場するのですから、かなりの違和感があります。時事ネタと違和感というのは笑いの基本ですから、特に算数の苦手な子どもにとっては大歓迎でしょう。「子どもが夢中で手を挙げる」というタイトルもあながち大げさではないと思いました。
次に、なぜパトカーか、ということです。このソフトでは時間と距離が自由に設定できますから、時速200kmとか300kmなど、ありえない速度も表示可能です。とはいえ、日本の公道で出して良い速度は時速100km以下。それ以上出して良いのは、取り締まり時のパトカーだけ、ということでこのような設定にしたのではないでしょうか。現実生活を例にして算数の概念を教えるのには、こういう配慮も必要なのですね。特に学校で使うことを想定しているソフトですから。
本書は「子どもが夢中で手を挙げる算数の授業 小学6年生」シリーズの、第2巻。扱っているのは「速さと比」の内容です。6年生の内容は、次のように構成されています。
-
円の面積/およその面積
比/速さ(本書)
比例/反比例
起こりうる場合/分数のかけ算・わり算
メートル法/ちらばりと柱状グラフ/拡大図と縮図
他の学年もすべて5巻構成です。教室に大型テレビが導入された学校では有効に使えるように思います。また学校だけでなく、家庭で親子で話し合いながら使うこともできると感じました。
教育用ソフトも新たな波が来ているように感じます。
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